強気日記  <阿部八段からのメールで随時更新>

       平成十八年度分

(平成十八年四月〜平成十九年三月)

 

 「春風到来」

 花粉の飛散も少なくなり、気分も徐々に
穏やかになってきた今日この頃です。
 対局も少なく、家でいることが多いのですが
嫁さんにとっては迷惑な話?みたいなので、四月
からは連盟通いをしなければと心に決めています。

 先週は一局。
王座戦本戦入りの一番糸谷四段との一戦がありました。
 棋士になって一年目で棋戦優勝(新人王)と大物
の呼び声通りの活躍。楽しみと同時にぶっ飛ばされたら
格好悪いなぁという気持ちもありました。
 最近は後手になったらお好きにどうぞ!と、
8四歩とする事が多いので、角換り腰掛銀に。
 A級順位戦丸山九段戦と同じ駒組みを選び、
仕掛けで長考。
 あの時にも思ったのですが、読めば読む程無理気味。
しかしこの駒組みを選んだ以上、ここで行けなければ
意味がないのでと決断して先攻。
 そこで軽視していたというか、普通は...という対応を
されて驚き。
 やっぱり年代によって感覚の違いはあるんですね。
 またそれでやや苦しめなのには閉口しました。
 終盤もぎりぎりの順を選ぶしかなかったのですが、
最後のチャンスを誤ってもらい辛勝。
 彼の印象は十八才なのに自分をしっかり持っている
という感じでふてぶてしいという風評とはちょっと違いました。
 春には大阪の大学入学ということで連盟で切磋琢磨する
機会が増えることと思います。
 感想戦は遠慮気味だったので自分らしくやってねと、
アドバイスしておきました。

 昨日は新年以来の馬券購入に競馬場へ
(といっても開催してない京都)義父と参戦。
 指定席に入り、メインまで昼寝。(笑)
 阪神のメインが大勝負ですが、モニターでパドック
返し馬を見てるうちに中山も気になりだして、締め
切りギリギリまで購否を迷う。
 大体こういう時は当らないのが経験則なのですが
来たらくやしい!とか言って可愛く千円購入。(笑)
 で結果は阪神馬単一点的中!中山三連複一点的中!
いや〜馬鹿ツキでひさびさにうれしい大勝ちでした。
 将棋を勝つよりうれしかったかなぁ?
いやいやそんな訳ないでしょ!

 二〇〇七年三月十九日記

 

 

 「順位戦終了」

 昨日のA級順位戦、見て下さった方には
申し訳ないほどの拙戦で、投了する時には
いたたまれない気持ちで一杯でした。
 敗因ははっきりしていて仕掛けのチャンスで
それを見送った事。
 夕休の時にはもう駄目な駒組みになっており
惨敗の予感がしてました。
 ただ、いいも悪いも今期はもう終わりました。
来期は期待して下さってる方の声にしっかり応え
なければと思っています。

 私生活では特に変わった事はありませんが
四月からこの太めの身体をなんとかしなければ
という事でスポーツクラブに通う事にしました。
 ただこの手のものは長続きせず、過去三回
ほど中途半端に投げ出した前科があります。
 マシーン系のエクササイズが苦手で、ウォーキング
なんて外を歩いた方が気持ちいいし、なんかあれは
鼠の籠でクルクル回るものを想像します。
 プール、サウナがいいなっと思うので、(それから
オープン格安。)得意の衝動行動にでましたが
さてさて、いつまで続くことやら。
 身体の元気が一番ですが、頭の活性化にも
大いに期待しているんです...
 
 最近の成績の通り、内容もひどいものが多いのですが
先日の竜王戦、佐藤棋聖戦は終盤勝ちを確信して
いたつもりだったので悔しい敗戦でした。
 相矢倉で時間をどっぷり使いあう展開で、苦しめから
やっとと思って、勝ちの組み立て把握したつもりが終盤
次の一手のような鬼手が。
 佐藤棋聖ほどのものが、あっさりと勝たしてくれる訳は
なくとも、さすがに網に入れたと思った矢先だけにねぇ...
 そこからもラッキーにも残しているのかと一瞬思いましたが
どの順もぎりぎり、向こうにいい手があって負け。
 やっぱり、ド急所で見落とししている人間に幸せはおとずれ
ませんでした。
 この一局、負けはしましたが、最近では一番いい将棋だった。
 新聞等で棋譜を見ていただければうれしく思います。
(棋士は棋譜を見ていただいてナンボの世界。
そこに思いが一杯詰まっている。それを感じとっていただけたら
なによりの幸せと存じます。)

 二〇〇七年三月三日記

 

 

 「ごめんなさい」

  本当に久しぶりになります。
 応援して下さっている方には申し訳なく思っています。 
 覚悟があったとはいえ、現実となるとショックが大きく、
手につかないといった状態でした。
 加えて風邪をひいてしまい、
花粉も舞い始めている状態で人生最悪かと(笑)
 精神的にはだいぶ立ち直れている状況で
本人が一番安心してはいますが...
 挑戦と降級を決めてしまい、最終戦を盛り下げた罪は
大きいですが、どうぞご容赦下さい。
 結果というのは時にうれしく、時に厳しいものですが、
これは勝負師の常。
 棋士人生がこれで終わった訳ではないので
絶対あきらめないし、それに見合う努力をしなければいけない。
 この一年の糧を来期のステージで存分に
生かさなければいけない。
 そのためにも、最終戦。来期につながるものを自分の中に
作る一番にしなければいけないと肝に銘じています。
 好きな言葉に
「自分の価値を決めるのは自分。人が自分を見捨てた時こそ。」
というのがありますが、皆様には引き続きの
熱い応援をよろしくお願いしたいと思っています。
 (最終戦のBS放送ぜひ御覧になって下さい!)

 二〇〇七年二月十四日記

 

 

 「今年もよろしく!」 

 新年は穏やかにゆっくりと過ごしすぎて頭が少々心配?ですが(笑)
今年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

 お正月は雑煮におせち、鍋にステーキそして酒と贅沢三昧で
また太ってしまったような気がします。
 5キロは痩せなければという目標があるのですが、
目の前に料理が並ぶと性格上、我慢できません。(笑)
 食べるならカロリーを消費するのみ!はわかっているけど寒いしなぁ。
 という訳で初詣には出掛けましたが、結局寝正月の見本?
みたいになってしまいました。
 一年の計は元旦からと申しますが、早々と出遅れ。
ま、いつものことだけどねぇ…

 渡辺竜王を見習って?(笑)たまには馬券を買おうと
六日は義父と京都競馬場へ。
 競馬好きはかれこれ二十年近くになりますが、
馬券にはとんとご無沙汰。
 といっても中継は見れたら見ますし、
競馬場にも行くんですけどね。(笑)
 負けて嫌になったという訳ではないのですが
いつからかこういう競馬ライフになったのです。
 馬券を買うにあたっての自分の鉄則は馬を見る事。
 これができない時は勝負は絶対しないと決めています。
 前日予想で勝負は京都金杯と定めて、
メインまではチョコチョコ買って、負ける。(笑)
 しかし調子はまあまあ、馬を見ての軸指定はそこそこ
来てたからです。
 そして金杯。前予想では本命エイシンドーバ。
ここから三連複でと思っていましたがパドック、返し馬でピンとこない。
 そこで素晴らしいと思ったのがマイネルスケルツィと
スズカフェニックス。
 迷わず、マイネルの単勝とスズカの馬単を大きく買う。
ここまではいい。しかしここで大きな過ちを...
 単勝を買っているのになんで三連複に走るかなあ。
馬単流しに決まってるやん!
 心のどこかで保険がある状態なのですね、マイネル
二、三着でもという...
 勝負にそれは駄目だとわかっているのに。
押さえなどは意味がない、それは結局人生のトータルでは負ける...
 新しい馬券の教訓です、勝負は絶対馬単!
心に刻み込みました。(笑)
 
 新年の第一局は幸いました。
明日は順位戦、三浦八段戦です。
 厳しい勝負を心から楽しみたいと思います。

二〇〇七年一月十四日記

 

 

 「良いお年を!」

  大晦日を迎え、今年も終わりですね。
 いい事、悪い事いろいろありましたが、
健康でいられた事に幸せを感じる歳になりました。
 お仕事については悔いの残る事もありましたが
ひさびさに眠れない夜もありましたし、忘れていた
ものを取り戻すきっかけをつかめたと思っています。
 年齢を重ねるごとに厳しい勝負になっていくのが 
勝負師の掟。
 しかし前進しようという気持ちがなければすぐに
駄目になってしまうでしょう。
 現状維持なんて気持ちではどうしようもない。
 今年一年、強い人に随分教わりました。
よく負けましたが、得るものは少なくなかったですね。
 若手?みたいな発言ですが(笑)これだけ集中して
トップクラスと対戦することはなかったですから…。
 正直、ここ数年は慣れ慣れしくこの世界に浸っていた
ような気がする…A級で戦ってみて生きがいを感じています。
 厳しい環境でなければ強くなれない、成長できない、
ということを切に思います。
 反省はしても後悔はしない。
そんな一年に来年はしてみたいと思います。
 もちろんファンの方には楽しんでもらえるように何事にも
努力!を誓います。
 
 年の瀬にうれしいニュースが!
名人戦の共催案がまとまった!
両新聞社に心から感謝の意を表します。
 
皆様もよいお年をお迎え下さい。

二〇〇六年十二月三十一日記

 

 

 「冷え込み厳しく」

 ここ二、三日の雨も手伝い、めっきり冷え込む
ようになりましたね。
 気持ちはここ二戦の敗戦でまた落ち込んでいます
が身体は元気です。
 年末に向けて景気良くという風にはいきませんが
その二戦を振り返ってみたいと思います。

 棋王戦の羽生三冠戦。
先手で三間飛車に振って石田流に。
課題でどういう対策か見せていただこうと思いました。
前例のある左美濃がその答。
後手のジャブに対して、捌きをみせたところ一転、
手を殺される渋い展開。
自陣を整備したのち、動いて十分だと思っていましたが
存外大変な将棋でした。
終盤手前でやり過ぎがあり、正しく指されたら投了級
だったのですが、見送ってもらい接戦の終盤戦。
自陣の角が使えてないので足りないと思っていたのです
が、感想では難しく、攻めが切れる心配よりも自陣の
安全を考えなければいけなかった。
思考回路の柔軟さがいつもながら足らない一局でした。

 王位戦、橋本七段戦。
橋本君は四段になったのが関東で移籍組ですが、関西
奨励会に在住していた時期があり、当時からまじめで熱心
な子だなと思っていた一人。
これからはそんな年代の違う棋士と対局することが多くなる
のだろうな。(笑)
先手で定型矢倉。仕掛けからも前例どうりで面白くないな
と思いつつも矢倉戦を選んでしまうとどうしてもこうなりやすい
のです。
仕掛けてからこうなったらこうやろうと思っていた手を試すが
若干筋悪だったようで、怖いながらも…という強気の受け
をされて指し切りとなってしまいました。
今年一番の悪い内容で投げきれず指してしまいましたが
完全に切れ模様となり投了。

 最近は勝っても負けてもすぐ連盟を後にするのですが、この
日は去りがたく、谷川−深浦のA級順位戦を感想まで見て
しまい電車で帰れなくなってしまいました。(泣)
 将棋に負けて、他人の感想戦を遅くまで見たのは久しぶり。
なんか昔に戻ったようで不思議な、懐かしい感覚を覚えましたね。

 今週はA級順位戦、丸山九段戦。明日東京に向います。
大らかな気持ちで楽しみたいと思っています。

 二〇〇六年十二月十三日記

 

 

 「とりあえず一勝」

  寒くなりましたねぇ。朝夕は油断してるとすぐに風邪を
引いてしまいそうなので注意して生活しています。
なにをおいても健康第一!う〜んまさに中年の言葉だ…

 ではこれから恒例にしようと思っている、対局回顧を。
十六日は王位戦、小林(健)九段戦。
王位戦はしばらくリーグ入りがありません。
若かりし頃はよく入っていたような気がするのですが
とにかく最近は記憶にない。
 一回戦から四回ほど勝てばリーグ入りできるので
比較的若手にチャンスがある棋戦です。
小林九段の先手で升田式石田流の出だし。
対してこちらも経験はなかったのですが、気合で
相三間飛車へと持ち込みました。
 序盤で作戦勝ち。ただし、中盤に入る前に早々に
疑問手を指しよりが戻るどころか無理攻めを強いられる
苦しい展開。受けに専念されると自信がなかったのですが
攻め合いにこられ混戦に。
 終盤は難しいながらも負けかというとこだったのですが
チャンスを見送ってもらって辛勝。
言葉にすると味気ないですが、山あり谷ありの楽しい将棋でした。
しかしこれも勝ったから言える言葉。
 うん…やっぱり勝たないけません。

 二十二日はA級順位戦、久保八段戦。
正直、星取り表を見るのが嫌になる展開。(笑)
黒星4つ並んでいることよりもその一つ一つの
内容が思い出されてしまうからです。
あ〜やればよかったな…とか、ひどい将棋負けたなと(笑)
でも、そんなに落ち込んではいないんです。
棋士にとってそんなことはどこかで経験してるし
これから勝つことによってしかそのミスを消すことはできない
のですから。
 先手で相振り飛車の出だし。
意外に思われるかもしれませんが相振りは好きな戦法の一つ。
採用率も相手振り飛車党の場合ですが、少なくないと思います。
久保さんと相振りを指すのは二度目。
 序盤、工夫してみましたが今イチだったか?
飛車の振る位置を決めないで相手駒組みの制約をつけたつもり
だったのですが。
 中盤は王の囲い方で大疑問があり、夕休みではまずい飯を
食べる事に。
 その後、一気につぶしにきたのにはビックリ!
読みではそれでは決まらないと考えていたから。
こういう時はどちらかが、うっかりしてるのですが
こちらは見落としがあろうが本譜しかやりようが
ないので気楽。
 結局それは久保さんの読み違いで、寄せまで
一直線でという内容になりました。
 とりあえず一勝です、やっとではありませんよ。(笑)
地力残留の目があるのですから、それを目指すのは当然。
引き続き応援してやって下さい。

 来週の頭は対局がありませんが、週末には棋王戦の敗者復活戦。
ゆっくりと策を練ってそれまでに身体をリフレッシュする予定です。

 二〇〇六年十一月二十五日記

 

 

 「将棋の日」

 今日十二日は将棋の日、関西イベントの日でした。
今回はきしろ杯(関西所属の女流棋士棋戦)公開対局 
とジョイントいうことでしたが来て下さった方、いかがだったで
しょうか?
 私もトーク、指導対局、解説と結構忙しい一日でしたが
楽しそうに笑って下さっているのを見ると、こちらもノリノリで
仕事をこなすことができました。
 日頃は女流棋士とはあまり接点がないので、年齢、得意戦法
などお客様に聞く場面などもありで(笑)彼女達の人気の高さ
注目度をあらためて感じた次第。
 決勝に進出したのは山田朱未女流初段と里美香奈女流一級
のお二人。
 今回のトーナメントを見た印象では両者とも終盤のねじり合いが
得意なように見受けられました。
準決勝ではどちらも苦しい将棋を終盤の逆転で制す内容でしたが
40分30秒という制限の中であれだけの将棋が指せるのか…と
失礼ながら驚きました。
 女流の層は確実に厚くなっていますね、また10代20代の棋士も
多く、これから大幅な伸びしろもあるように思います。
正直、強くなり過ぎて負かされるようなことがあると辛いですが(笑)
頑張って盛り上げてもらいたいと切に願う気持ちです。
 決勝は後日、場所もあらためて公開で行われる予定で解説は
谷川九段だそうです。
 詳しくは関西将棋会館のホームページに掲載されると思いますので
御覧になって下さればと思います。
 本日ご来場の皆様本当にありがとうございました、よろしければ感想
など応援掲示板に書いて頂けるとうれしいです!

 次は対局の感想を。
七日、棋王戦、佐藤棋聖戦。
気合、体調万全で挑んだつもり。佐藤棋聖の先番で力戦向かい飛車。
まったく予期してない戦形。
まあ佐藤(康)さんだから予想しても始まらないか。
そして穴熊され、こちらはその優秀性に苦慮するが、
互角の序中盤戦からねじりあいに。
そして優勢を掴めると読んだ順になり、勝ちを信じたが意表の一手で
どうしても勝ちがない!一歩足りない…
佐藤(康)さんも読み筋では駄目なので予定変更とは言っていたが
それにしても…
感想でも敗因不明。
釈然とはしませんが、双方一分でベストを尽くしたとは言えるかな…
う〜んでも、こんな言い訳ばかりで進歩なしは困るね。
 いろんな意味で痛い一敗でした。

 十日、棋聖戦、南九段戦。
勝てば棋聖リーグ入りの一番。一週間で二対局は久々。
後手番で中飛車。ただゴキゲンではなく、南九段が早めに角道を
止めたため変化する形。そして相穴熊へ。
若干作戦勝ちと思う序中盤戦から一気に終盤に突入する激しい順に
飛び込んだが、これは無謀。
一手の見落としがあり、あっという間に敗勢。
しかし久々にとんでもなく恥ずかしい手を指してしまいました。
人がやったら酷評するでしょう...
 それからはずっと駄目だったのですが、最終盤南九段に錯覚があり、
勝ち。
 勢いよくというのは大事ですが、ちょっといくらなんでもという感じで、
その恥ずかしい手を指した時の嫌な感触が指先に残っており、
大反省の一局。
 もうちょっと自慢話を書けるように頑張らないといけませんねェ〜。

 二〇〇六年十一月十二日記

 

 

 「野外ライブ」

 秋晴れが続き、ひさびさにさわやかな気持ちで
日記を書いています。
 
 対局を振り返るとまず、A級順位戦谷川九段戦。
てっきり、ゴキゲン中飛車か一手損角換わりかと思っていたら
二手目の84歩に意表をつかれました。三手目に十四分の
長考で逆中飛車を決意。
戦前と全然考えてなかった戦形を選ぶのはひさしぶりでした。
序盤で戦機とみて動き、それが功を奏してやや作戦勝ち。
王を固め決戦へ躊躇なくいったのが疑問でもう一手待たなければ
いけなかった。それが最後まで(香損が)響く展開で足らないと
いうことになってしまいました。
残念。しかし力一杯指せた将棋でこういうのは負けても悔いがない
といえる内容でした。

 朝日オープン小林(裕)六段戦。
同門対決、1年ぶりくらいの対戦でした。
先手で小林(裕)六段の作戦は一手損角換わり。
早繰り銀から超急戦を仕掛け、有利に。
勝勢と読んだ局面で時間もたっぷりあるし、
読みきろうと長考したのですが、明快な順がないのには驚きました。
その後は難しかったのですが小林君のあきらめがあり、勝ち。
しかし本当に勝つのはたいへん…とあらためて思わされた一局でした。

 小林(裕)戦の翌日、友人の突然の誘いで渡辺美里さんの野外ライブへ。
何年ぶりだろう…渡辺美里さんのライブは過去2回ほど行ったことが
ありますが、もう20数年前かと思います。(笑)
前から十列目くらいの席。熱狂的なファンはやっぱり私と同じくらいの
年齢の方が多いように見受けられました。
美里さんの姿もなにかなつかしく、また歌声も変わりないボリュームで
奨励会の対局の前、この曲何度も聴いたなあーと
昔の記憶が次から次へとよみがえってくるのには感動。
これが音楽の力なのでしょうね、また美里さんは紛れもなく
同じ世代のトップアーチストの一人だと認識。
音楽を聴くということに関してずいぶん疎くなっていますが、
これを機にライブ等にまた出掛けてみたいと思わせてくれた一日でした。

 31日、1日の竜王戦第二局、NHK衛星放送の解説を務めます。
聞き手は千葉女流王将。
佐藤棋聖先勝での第二局。渡辺竜王としては二番離されるわけには
いかない重大な一局。
渡辺竜王の先手番で予想は佐藤棋聖のゴキゲン中飛車と
戦形予想しています。
 聞き手の千葉さんは素直にしゃべってくれるので、
私もストレートにできて楽しいです。
そんなちょっと本音?解説をぜひテレビで御覧になっていただければと
思います。(笑)

 二〇〇六年十月二十九日記

 

 

 「竜王戦の秋!」

 東京から帰ってきてこの日記を書いています。
昨日は久しぶりに充実した気持ちで指せた
ような気がしました。
 やはり、トーナメントでいいところというのが最近
はなかったので気持ちの張りがあったようです。
後手番でゴキゲン中飛車。中盤から終盤の入り口
までうまく指せ勝勢、そこから寄せを急ぎ過ぎて最後
は指運みたいになってしまいましたが。。。
 内容はまだまだですが、大分元気が出てくる感じで
これからに光明が見えたような気がしてます。
勝敗に一喜一憂するのは我々の世界ではあまり
ありませんが、きっかけの勝利、敗戦は必ずあるもので
ここ数戦でそれを掴んだ感じがしているのです。
 今年、このままでは申し訳ない。
 応援していただいてる方に楽しんでもらえるように
頑張るつもりです。

 第19期竜王戦七番勝負が始まりました。
若き竜王に脂の乗り切った佐藤棋聖が挑むといった図式
で私も非常に注目しています。
 今回の結果は非常に大きな意味を持つような気がします。
負けたくないのは両者当たり前ですが、佐藤棋聖のそれは
並ならぬものがあるでしょう。
 今年になって挑戦者といえば佐藤。これはすごいことなのですが
佐藤さんクラスではこんなことで満足できない、奪取できない
事実に苦しんでいるはずです。
 一番強い棋士を目指しているのが佐藤という男。
若い渡辺さんに負ける訳にいかないと思っているでしょう。
対して渡辺竜王。そんな佐藤棋聖を負かしてこそ第一人者。
防衛すればその自信でまた一回り大きくなるでしょう。
このステップを逃したくないはず。
 第一局はサンフランシスコ、海外対局。
時差があるので大変だろうと思います。
渡辺竜王は楽しむという気持ちが強い人なのであまり関係
ないような気がしますが、佐藤さんは今年に入ってからずっと
ハードスケジュールですから心配ですが、今回対局2日前に
現地に入っているはずなのでいい骨休めになったかな?
とにかく将棋の状態は両者とも万全といえる調子なのですから
体調もベストでいって欲しいと思います。そして年末まで
最高の戦いを満喫させていただきたい。

二〇〇六年十月十一日記

 

 

 「ネット観戦」  

  お久しぶりです。対羽生戦を負けてからは引きこもり?
生活で、やっと割りきれたところで日記を書く気になりました。
内容については報道の通り。もうふれませんが(ふれたくない
が正しいか。)自分らしくやれてるので問題なし(か?)。
後は白黒を逆転させるだけですね。10月は対局も多いので
楽しみにしているんです。よく負けましたが、ここからキチッと
折り合いをつけてみせるつもりです。
 はっきりいって頭にきましたね!(笑)

 今日はC1の順位戦が行われてますね。昔なら連盟に行って
リアルタイムで多面の継ぎ盤を研究する、いうのが自分自身の
定番の勉強法という時期もあったのですが、今は大阪に住んで
いないため、もっぱらネット観戦で楽しんでおります。
 ただ、これは勉強するということにおいては有効ではないと感じ
ており、趣味で観戦というのが本音です。
 やはり旧世代なのでしょうか?
盤に並べて考えなければ頭に入らないようになっているようです。
今の若い棋士が読みに入った時、頭の中の映像はおそらく
ネット上の盤という人も多いのではないでしょうか?
私は連盟のテレビカメラに写し出される盤が自分の頭の中の映像です。
だから例えば、ネット将棋。告白すればしたことありますよ。(笑)
だけどプレステと変わりません(笑)。ゲームセンターで遊んでる
ような感覚になってしまって...
 緊張感がまったくないというのが自分の結論でしょうか?
充実感が得れない感じでどうも自分には駄目なようです。
(ネット対局を否定してる訳ではありませんよ。念のため。)
道場、大会などで指すと気合とか、迫力とか、その対戦相手から
感じることってよくありますよね?
私、そういうのがものすごく好きなんですよね。(笑)
将棋って格闘ゲームと言われますが、格闘ならやっぱり燃えなくて
はいけません!(笑)
将棋を心から楽しみたい方はぜひ!道場や大会、また教室に
来て頂きたい。
対人のふれあいがそこにはあります。また忘れていた充実感も。

 明日二十七日、王座戦第三局が神戸市、
ホテルオ−クラ神戸で行われます。
立会い谷川九段、解説阿部、聞き手村田智穂女流初段、
ゲスト山崎七段で解説会が現地で五時から行われます。
他棋士も飛び入りで何人か来られると思われるので関西では
これ以上望めない解説陣になるのではと思います。
羽生王座ー佐藤(康)挑戦者の姿も終局まで御覧になれば
見ることができるかも?しれません。

 明日のチャンス、お見逃しなく!

二〇〇六年九月二十六日記

 

 

 「涼しくなりました!」

  朝夕は涼しくなりましたね。夏の疲れが...がという方も
おられるでしょうか?
 体調は極めて良好、散歩も快適です。
気持ちも上向きなので、さあ!これからこれから。
 明日は東京で順位戦、羽生三冠戦です。
羽生さんとは竜王戦七番勝負以来の対局となりますので
本当にひさしぶり。
 強い人との対局だとプレッシャ−がありません。
自分の力を引き出してやるだけだからです。
恐れとか邪念を抱かぬ状態が勝負に挑む際のベストな
心理状態でしょうか?
 自然体、燃える気持ちで指そうと思っています。

 古いものは淘汰される。最近よく聞く言葉ですが、
私自身は「?」と思う事も多々あるのです。
なんか全て新しいものが良くて古いものは駄目だと言われて
いるような気がして...
例えばプロの勉強法で記録係というのがあります。
これは奨励会(プロの養成機関)の人が公式戦の棋譜を取り
持ち時間の管理、秒読みをするという役目なのですが、
これが最近は不人気だというのです。
理由は様々なようですが、長時間拘束されるというのが
その一つのようです。
確かに後で棋譜を見れば、手っ取り早くその将棋を見る事は
できます。
ただリアルタイムで対局者と一緒に考える事がそんなに無駄な
事には思えないのです。
集中力を鍛える事にもなり、対局者の読みと自分の考えが
どのように違うかもはっきり見えてきます。
そこで自信を持ったり、足りない部分を補なう努力をしたりと
得るものは大きいものでした。
1から10を飛ばして、最新形を知ってもしょうがない。
全部経験した上でいいものを残していかなければいけないと
私は思います。
(うーむ。小言...おじさんになったなぁー)

二〇〇六年九月三日記

 

 

 

 「なにわの将棋少年」

  今日は昨日の反省文から。
 中盤戦は後手としてはまあまあの戦いと思っていたのですが、
終盤の手前で王の固さを生かした強行を逃してからは混戦。
というかちょい足らずか...という感じになってしまいました。
ただその強行は読み筋になく、これは実力と納得できるのですが
終盤戦については悔やまれます。
 正確に指されれば負けという局面ではあったのですが、
お互いに時間のないところで読みきりというわけでもなかった
にも関わらず、根性入れて粘る手が指せませんでした。
感想でもかなり突付いた結果、やはり負けということになった
のですが、実戦でそう指せばどう転ぶがわからなかったかも
しれません。
「根性が足りん!」その一言につきます。
佐藤棋聖がどうとかいうのではなく、最後の最後までベストを
尽くせなかった。
我々は高度な技術とともに、一生懸命打ち込む姿があるからこそ
プロと認めていただいてるのではないかと思います。
 自分自身に負けているようでは失格。厳しいです。

 先日の将棋まつり、たくさんの方のご来場ありがとうございました。
私の出演日のメーンイベント?なにわの将棋少年、柔大君と
森内名人の対局は人だかりの山。
(のちの棋士三人のトークでは空席が...錯覚ではなかったような...)(笑)
控え室で話す機会があったので、将棋を広めてくれてありがとう!
と言うと、照れたシャイな顔を見せてくれて、
初々しいどこにでもいるような少年でした。
テレビ出演しているので、普通とは違うのかな?と思っていたのですが
本当の将棋大好き少年。
いろいろおしゃべりしたのですが、そのうち前からおかしな気配が...
(子供の目線でしゃべっていた。)
なんと!カメラスタッフがその様子を映像に撮っていたのです。(笑)
いいかげんな事ばかりしゃべっていたので赤面です。
オンエアだけは勘弁してねとお願いする羽目になりました。(笑)
これからもどうぞ将棋を楽しんでもらい、また子供タレントとしても
大きく羽ばたいてもらいたいと願っています。
 皆さんも応援してあげて下さい。


 八月十九日、十三棋道館道場で午後六時より指導対局をします。
一般二千円、北大阪支部会員千円です。(席料別)
熱意を持って半年間通って下さったら必ず、効果がでます。
私も棋力アップして頂くため一生懸命なんです。
道場で指してウォ−ミングアップののち指すのがいいかもしれません。
ぜひ一度来てみて下さい。

二〇〇六年八月十五日記

 

 

 「夏真っ盛り・・・」

  報道されての通り、一連の名人戦問題も一応の区切りと
なりました。
こういう話は噂話等が飛び交い、言った言わないということが
多いので、事実はどうなのか?確かな情報と確信持った上で
自分なりに判断して投票ということになりました。
ただトッププロの判断とは違う形になったのはおそらく連盟史上
初めてのこと。
 これはどういうことなのか?私にはまったくわかりません......


 今週も対局はなし。暇かといえばそうだし、雑用もありという
いつもの状態。
 8月1日が終わったので放心といった感じでしょうか。
ただ週末には静岡でJT日本シリーズの谷川九段と三浦八段の
対局の解説を務めます。
 この日本シリーズ、土曜日の子供大会もジョイントしていて
非常に活気のある楽しみにしている仕事の一つです。
 この大会には何百人にいう子供達が集まります。
ルールを覚えたての子から高段者の強い子供達までレベルは
様々です。その集客にも驚きますが、一番感心するのは初心者の
子供達でも楽しめるような大会になっているということです。
大会ですから二敗失格ということになりますが、その後も自由対局
して下さいね!
たくさん勝った子にはこの駒形消しゴムあげるからね!というように、
将棋を一日楽しんでもらおうという企画が盛り沢山なんです。
また将棋を知らない子供達にも駒と盤に携わるゲームなどして
知ってもらう!というような企画もあります。
谷川九段や三浦八段がお相手する時間等もあるようなので、
子供達と山崩し(笑)といった場面はファン必見かも。
 私自身、静岡にはあまり馴染みがありませんが、そちらのお客様との
コミニケーションも非常に楽しみにしております。
 関西弁のおもろいトークをお約束します。
 たくさんのご来場お願いいたします。


 恒例の近鉄将棋まつりは8月10日から14日まで近鉄百貨店
(阿倍野店)で。
 私は11日に出演です。その日は森内名人、畠山(鎮)七段との
トークや解説等が出番です。
 将棋まつりはファンの方の反応が肌で感じられて、緊張する反面
やりがいがあり楽しんでできます。
 今年も損をさせない、来てよかった!という一日にさせる気概を
持ってやりたいと思っております。

二〇〇六年八月三日記

  

 

 「涼しい!」

  今年の梅雨は雨が少なく、菜園の水やりが大変だった?
みたいです。(母親がしてます。)
しかし、収穫は上々。毎日のように胡瓜、茄子が食卓に並びます。
苦労すればそれに応えてくれるのが草花のようです。
ここ二、三日は雨が降り、涼しくて個人的には快適。
明日の対局も気分よく、スカッとした内容と結果にしたいですね!


 先月の順位戦、対藤井戦はまたもや反省の多い敗戦でした。
はっきり優勢の局面がありながら勝てないのは不甲斐無いの
一言です。
 楽観はなく、怖さがあるんですね。
 対局の少なさゆえの勝負勘不足、勝ててない悪循環です。
人事のようにあっさりとクリア−しなければと思います。
楽観して、なんじゃい楽勝やね!と言えるように早く
戻らねばいかんですね。(笑)
 人間の勝負ですから心理面は大きいです。
 それがわかっていながら引きずってしまうのも人間なの
でしょうが...

 先日、NHKで放送されたプロフェッショナルという番組で
羽生さんが出演しておられたので、御覧になった方も多かった
思います。
 同業者でなんですが(笑)羽生さんの飾らない顔が随時に出ていて
あらためてすごい人だと思いましたね。
 カメラを意識しない自然体で、対局中の孤独感、終わって負けた時の
脱力感、勝った時の歓喜。羽生さんは全て見せていたと思います。
なんか感動しました。あらためていうと私は同業者なんですが。(笑)
運命は勇者に微笑む。これは羽生さんの好きな言葉らしいのですが
さもありなん。かくあるべしと勉強させてもらいました。
 (こんなことばかり言うとるからあかんのかな?(笑))

二〇〇六年七月十八日記

 

 

 「いよいよです!」

 梅雨に入り蒸し暑い日が続きますね。しかし夏生まれの事
もあるのでしょうか、こんな感じの方が体調もいいようで
ご機嫌もよいです。
 名人戦も終わり、最近の注目はやはり棋聖戦でしょうか。
 それにしても佐藤棋聖は絶好調。
 こんなに強い人見たことありません。
 もう定跡手順なんてお構いなしで、こういう手はリスクが高いし
やめておこう...と普通は思うところでも豪放になんでもありの状態。
それで勝ちまくるのですから快感、爽快そのものでしょう。
実は一番強い事に気が付いたかな?(笑)
 佐藤棋聖は性格的にも温厚で、大人しい人なので現在
の無頼的(笑)将棋には本当に驚いています。
 若い時の形良く矢倉の定跡形を基調とした、俗に言う
本格派路線から転換。
 棋聖戦もそうですが王位戦のタイトルマッチも控えており
楽しみは尽きない要注目人物でしょう。
 
 いよいよ自身の順位戦が明日開幕します。
すべて強敵だけにやりがいは十分、なにか冒険に行くような
気持ちでいます。
 理想を持ち、きれいに勝つというのができればそれに勝るもの
はないのですが、ここでは勝つという意思を優先しなければ
いけないのだと思っています。
 最下位の順位。残留目指してもしょうがないし、そんな気持ち
では結局落ちるでしょう。
 挑戦する一年、それを目指す開幕戦です。
 
二〇〇六年六月二十七日記
 
 

 

 

 「初夏かな?」

 先月二十八日の阿部、畠山(鎮)のお祝いの会に
 たくさんのご来場、誠にありがとうございました。
皆様のテーブルを回れるように...とイベントはトーク
だけとしたのですが、200余名の人数ではそれも
叶わず、一言もご挨拶できなかった方もおり、大変
失礼の段、お許し下さい。
 当初の150名の予定を上回る、盛況に関係者
ファンの方に感謝、感謝。
私もこれを期待値と受け止め、ますます精進して
参ります。
 ご挨拶で申し上げた通り、関西を応援して頂きたい。
そしてその中でも阿部隆を少しエコヒイキして頂ければ
うれしく思います。
 これからもどうぞよろしくお願い申し上げます。

 祝賀会が終わってからはグッタリ。
畠山さんも燃え尽き症候群で少し体調を崩したと
申しておりました。
 日常に戻ってからは研究会がおもな仕事。
最近は連勝中。ちょっとずつ、手応えが出てきているので
少しだけ安心しているんです。
どんな将棋でも勝つことは良薬で、負けたら自信を削られます。
勝つということの執着心をもっと養わなければ今はいけないのかな
思っています。
 研究会というと興味ある局面を試しに...というがあるのですが
今はそれプラス、テクニックを駆使して最後は勝つ!という若い時
の気持ちに戻ってやっているということでしょうか。
一番恐れているのが気持ちの衰えなんです。
それさえなければ、まだまだ強くなれるのではないかと思っています。

 今週の週末は名古屋、岐阜方面での支部の巡回教室に
行って参ります。
 関西での巡回教室は今年で3年連続です。
地方へ行き、ファンの方と直接接する機会は私にとりまして
楽しみであり、勉強でもあります。
 指導将棋の後は懇親会でさまざまな話題について語りあう
のが定跡です。
 そしてご意見頂いたものを連盟に持ち帰り検討、またこちらも
お願い等をする場合も。
 ギブアンドテイクと申しますか支部と連盟、もっと近い距離に
いる関係が理想かと思います。
 今回の巡回も有意義なものになると思っているんです。

二〇〇六年六月八日記

 

 

 「旅」

  今年は春の陽気というのをあまり感じなくて
一気に梅雨かと思わせるような蒸し暑さですね。
今週は棋士総会といよいよ祝賀会です。
 畠山鎮七段は昨日、竜王戦本戦入りを果たし
花を添える格好です。うらやましい限り。
 当日は威勢のいい、楽しい畠山節が出ると思われます。
 準備の方は世話人の方にまかせっきりですが、サービス
精神と思いやりのある方々なので問題なし。
 自分も畠山さんとのトークに思案を重ねております。
もう数ヶ月たっているので、お祝いをして頂くというより
イベント、いかに楽しんでもらうかという思考になっています。
たくさんのお申し込みがあり、ありがとうございました。
当日受付もありです。笑いがいっぱい、真剣なお話ももちろん!
 将棋ファン以外の方にも興味を持って頂く内容にしたいと
思っています
 ご来場お待ち申しております。

 棋士が旅行する季節。それは四月、五月です。
理由は明白で対局が少ないからです。
 私も先日、妻と立山アルペンルートの旅に行って参りました。
実は初めての団体旅行!強行軍ですよ。って聞いてはいた
のですが、いつものんびりの私には本当にきついものでした。
なにがきついって、まず朝。
 宇奈月、大町という温泉街に泊まったので、朝風呂に入って
朝飯という定跡手順が楽しみのはず。
しかしその手順を遂行するには朝、とてつもなく早く起きなければ
いけないのです。
 バスの集合時間が7時半。これに間に合うようにとなると、
6時起きと普段では考えられない時間に起きなければいけない...
棋士は総じて夜型が多いのです。
私は普段平均9時前後、起きです。
(怒らないで下さい、棋士はそういう職業。)
そして今回はバスの移動時間が少なく、
仮眠をとる時間があまりない!
それで歩けっていうんですから、ほんまに参った。
 しかし、眺望は見事!の一言ですね。
雪山はスキーをしない私にとって、
初めて見るような感動を与えてくれました。
人間40年近くやってますが(笑)
自分の知っている事なんてこれぽっちしか
ないんだろう...とあらためて思わせられました。
違う世界がある。違う考え方も。
やはり人生勉強だねえ〜と柄にもなく、思ったりして。
 出不精の私ですが、旅も悪くないですね。

 二〇〇六年五月二十三日記

 

 

 「黄砂...」

 花粉の季節が終わってやれやれ...と思っていたら
今度は黄砂ですか...
症状は花粉と同じく、くしゃみと鼻がズルズル...
本当に嫌になってしまいますね。
ただ体調は悪くなく、宴席がある仕事が多かった事
もあり体重は増加してしまいました。
減らすのは大変なのに、増えるのは簡単ですね。
これがお金ならいいのに...(というのは冗談)
頭の方は最悪なようで、いざという時にはまったく
機能しません。
 練習ではフル回転でそこそこの見え方、成績
なのだから、気分を変えてやるしかないですね。
 とにかくこのままではどうしようもない!

 という訳で私自身、楽しいお話があまりないので
本日行われている、名人戦第三局の展望でも。
戦型はなんと矢倉。谷川九段の先手だったので
これは意外な選択のように思いました。
ただ出だしが7六歩に3四歩だったので得意の
角換わりにはならないのですが...
 そして6六歩!だったのでてっきり相振りモードかと
思いきや、8四歩。
おそらく6六歩で2六歩なら森内名人は四間飛車
だったのでは?と思います。
(近況の公式戦でも採用してましたから。)
8四歩は矢倉ならどうぞ!得意の相振りはまた今度
にしましょう!と名人が言ったように聞こえました。(笑)
 一日目は定跡形といっても、もう10年ほど前から
指されている形で、そろそろどこかで当時との見解の
相違が出るんだろうな...と見ていたら今日二日目
出ましたねぇ!4一角!
この手は研究手ではないと思います。
この一局の中で考え抜いた手、いかにも谷川流。
この角は捕獲しようとすればできるんです。
ただ、どうしても形が乱れてしまう。攻めの体勢が崩れてしまう。
その隙を突いて攻めきるというのが先手の意思です。
勢いを感じますし、このシリーズで初めて谷川九段らしい手
だな!と思いました。
 次の名人の手に大注目しています。
 受けか攻めか...理論的に一つ一つ厳しく追及して読む
のが森内さんの持ち味。
 楽しくなってきましたね。

 本日、私は昼から自宅で研究会。
やれることを一生懸命にやりたいと思います。

 二〇〇六年五月十二日記

 

  

 「祝賀会よろしく!」

  今月の対局は二局。対局以外の仕事でこんなに忙しいのは
久しぶりで、今月はもう予定が全部詰まってる!という感じです。
ただ、暇な時よりも集中力が増してるような気がしていて、
勉強も楽しく、はかどります。気候のせいもあるのでしょうね。
 
 二十六日今年、自身の開幕戦が始まります。
竜王戦藤井九段との一戦です。
竜王戦は今年からシステムが変更された部分があって、
一組から決勝トーナメントへの増員がなされ一組の特権が
大きくなりました。
(その代わり三組から一人減らす形。一組から五人。)
一回戦敗退でも竜王への道が消えないのは一組だけと
これは前と変わりませんが、このチャンスは生かしたいですよね。
藤井さんとは久しぶりの対戦で前回は私が挑戦者になった
決勝トーナメント以来です。
今、朝日オープンの五番勝負も戦っておられるので精神状態も
最高に近いものがあるはず。
 こういう相手とやるのは歓迎。
自分の現在の調子などを計ることになるからです。
頭を空っぽにして集中してやります。
勝って好調の勢いを頂くつもりです。

 もうホームページ上でご存知かとは思うのですが、
五月二十八日午後六時からホテルグランヴィア大阪で畠山鎮七段と
合同で昇級祝賀会を開いて下さることになりました。
 世話人北川茂氏は阿部、畠山が子供の時通い、
修行した十三棋道館道場の席主でアマ時代の師匠です。
(駒落タロウ氏も時を同じくして棋道館で指しておられました。
当時大学生かな?)
 当時はよく叱られましたが、将棋だけでなく礼儀その他全般に
わたり指導して下さり、今となっては全てがいい思い出。
棋士になってからも昇級するたびに祝賀会を開いて下さり、
物の考え方、人柄、尊敬する御一人です。
 畠山さんは同じ釜の飯を食った仲。
ちょっと私が先輩なので威張らせてもらってますが、
竹を割ったような気持ちの良い男。
お互い言いたい事を言うというのも気が合うということでしょうか。
祝賀会当日は私と畠山君で何かおもしろい事をやろう!と
相談した結果、将棋を指すのではいつもと同じなので、
トークで対決してみる?ということになりました。
お互いの思いを笑いあり、怒りあり、感動あり、
で行いたいと思っています。
ここでしか言えない話もあり?(笑)かもしれませんので、
ちょっと関西応援してやるか!という方はぜひに参加して頂きたいです。
 お土産に二人の連署扇子、また抽選で直筆連署扇子、
直筆色紙など用意しております。
 楽しい会になるよう全力で取り組みます!よろしくお願い申し上げます。


  二〇〇六年四月二十四日記

 

 

 

 「名人戦開幕!」

 今春は対局は少なく、花粉症(スギアレルギーなので、もう終わり)
も治まり、快適!快適!と思いきや風邪を引いてしまい、
先週のテレビ解説ではどうなることやら…という出来でしたが、
なんとか無事終了。
管理人タロウ氏も風邪でひどい目?にあったとか。
現在は快方に向っておりますが、皆様もお身体にはくれぐれも
ご注意下さい。なにをおいても健康第一!ですからね。

将棋界の春といえば、朝日オープンの五番勝負と名人戦の開幕!
今回は組み合わせがそれぞれ異なり、当然個性も異なるので
違った趣向で楽しめますね。

 朝日オープンは羽生選手権者と藤井九段の対戦。
この両者の対戦といえば二期連続でぶつかった竜王戦を思い出します。
あの時の印象は藤井さんが序盤でリードして、羽生さんが終盤で
追い込むといった非常にエキサイティングな展開が多く、
心に残る名勝負でしたね。
 当時の藤井さんはどちらかというと長い持ち時間で力を発揮する
タイプかと思っていたのですが、ここ最近を見てますとJT杯優勝、
そして今回持ち時間三時間の朝日オープンの決勝進出と変化されて
いるように思います。
 対して羽生さんも当時は指されなかった、相振り飛車という技を
身につけてお互いここ数年の進化の見せ所といったところでしょうか。
振り飛車党ファンには待望の藤井九段の挑戦。必見ですね。

 本日から名人戦が始まりました。
谷川九段の先手で戦形は一手損角換わり戦法ですね。
後手なら森内名人は先手の作戦に追随する…
誰かさんの予想はあっさりとはずれました。(笑)
この一手損角換わりが指されるようになって二年くらいでしょうか?
もうすっかり認知されており、私自身も数局経験がありますが、
後手を持って角を換える時にはいつも違和感を感じてしまいます。(笑)
 森内名人もこの戦法については採用率が高くないはずです。
ただ棋王戦五番勝負での対羽生戦、順位戦のプレーオフ羽生−谷川戦
を見て何か思うところがあるのではないか?と推察します。
最近の上位の棋士を見てると好奇心旺盛。
わからないなら実戦で試してみるか!
って感じで大きな勝負であろうとお構いなし!です。
 一日目の見所としては谷川九段が棒銀模様でいくのか、
それとも相腰掛銀か右玉模様なのか?先手の作戦が注目ですね。

 この続きは明日、関西将棋会館で十八時より行われる大盤解説会で
お話します。
名人戦を通して将棋の楽しさ、奥深さなどをうまく伝えられればと
思っています。
 たくさんのご来場お待ち申し上げます。

 二〇〇六年四月十一日記

 平成十七年度分(平成十七年五月〜平成十八年三月)